無邪気
久保 遥空
床に転がる血濡れた包丁、転がる両親の死体。僕は恐怖のあまり打ち震えていた。どうしてこうなったんだろう、たった一時間前まではただ僕の誕生日が祝われていて、とても幸せな空気が漂っていたというのに。
かたん。と音がした。そこを見れば血濡れた人間が立っていた。その人は血濡れた包丁を拾い上げると僕に刃を向けた。
「うあああああああああ!!」
その人が叫んで、僕に向かって突っ込んでくる。寸前で避けた僕は、思わず机の下に潜り込んでいた。
こんなところにいたって意味はない。隠れている場所を見られていては隠れていないのと同じこと。僕は辺りを見渡した。死体の横に転がる小さなナイフがあった。あれでなんとかするしかない。
僕は意気込んで、包丁を持つ男がこちらに向かってくるのを横目にナイフに向かって飛び出した。
「どうして…!」
男が叫んだ。僕はナイフを手に取って、男の心臓めがけてつきすすんだ。男が落ちたケーキを踏んで滑って転がった隙にまたがってナイフを突き刺す。
「どうして、君は人を」
男の最期の声に、僕は言った。
「だって、なんでもしていいよって言われたんだもん」